読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

図書の網

@lumelyのブログです.概ね研究や教育の話を書きます.

学生に伝えたい,勉強・研究への取り組み方

教育・研究論

初めまして,lumelyです.博士課程3年目の学生をやっています.
ある程度アカデミックなことについて何かアウトプットする場を前々から設けたかったのですが,業績をまとめているresearchmap(NetCommons)は機能に不満があり……

 

私が出入りしている研究室では月1回くらいで色々な先生をお呼びし,ご飯を食べながらお話を聞くというイベントがあるのですが,その中で必ず聞かれる質問の1つに「学生時代にやっておけば良かったこと」があります.

これについて,これまでの経験ではほぼ全員が口を揃えて「もっと学生のうちに勉強しておけば良かった」と言うのですが,最近になりようやくその気持ちが分かってきました.

一方,学生生活も9年目となると色々と反省もあるため自戒も兼ね,研究室に配属され,これから研究に取り組む大学3年次1月の私に卒業研究の取り組み方について伝えることを想定して勉強や研究への取り組み方をまとめてみました.

各自に合うスタイルは多種多様ですが,参考程度にして頂ければと.

目次

  • アベレージを意識する:週40時間を目標にする
  • メリハリをつけて集中する
  • インプット/アウトプットを意識する
  • 1冊ノートを作る
  • 業績を意識する
  • 凄い人と絡んでも自分が凄くなるわけではない
  • 一芸を伸ばす
  • 身近にいるやる気のある人と競い合う
  • 負のスパイラルに陥らないよう,すぐに相談・質問する
  • 直接口頭で相談する
  • 〆切りを設定し,落とすことを考えない
  • 挨拶を怠らず,礼を尽くす
  • 1本のストーリーを描く

 

アベレージを意識する:週40時間を目標にする

宝くじに当たったとか,一生遊んで暮らせる人を別としてほとんどの大学生は卒業後,就職しなくてはなりません.仕事の内容や就業時間は職種によって千差万別ですが,仮に完全週休2日制,1日8時間労働のホワイト企業に就職したとしても,毎週5日×8時間,つまり40時間働かなくてはなりません

習慣というものは中々変えられませんから,もし大学4年の時点で毎週大学に行く時間が週40時間からほど遠いのであれば,卒業は出来たとしてもその後で非常に苦労するでしょう.

勉強や研究に求められるのは試験前夜の詰め込みのような瞬間的な時間ではなく,毎日こつこつと努力を重ねることです.研究室にコアタイムが無かったとしても,平日は少しでもいいので研究室に行き,週30時間は勉学に時間を割きましょう

メリハリをつけて集中する

最初のうちはとにかく研究室に来ることを習慣付けるため,とにかく来ることだけを達成できれば良いと思いますが,その次は集中力を高めることを意識しましょう.研究室に居るだけで勝手に研究が進むわけではなく,だらだらソシャゲやSNSをやりながら取り組むのは得策ではありません*1

そして,集中するために必要なのは適切な睡眠と休養,食事です.オフとオンを意識し,休むときは休みましょう.終わるまで徹夜するより,朝早く起きて取り組んだ方が効率が良いときもあります.

インプット/アウトプットを意識する

私の研究領域が比較的学際的なせいかもしれませんが,ある1つのことに関する知識だけ積み重ねても研究は中々うまくいかず,応用も効きにくいです.少なくとも周辺領域については広く浅く押さえるようにしましょう.また,社会がその分野についてどう見ているかを掴んでおくことも重要です.RSSリーダーに関係する著名人のブログ等やキーワードアラートを入れ,メールマガジンを購読し,メーリングリストに入り,毎日30分~1時間程度眺めるのをお勧めします*2はてなブックマークをやっているのであればマイホットエントリがかなり便利です
もちろん論文や学会誌,専門書も読みましょう.特に論文は分野・言語ごとに好まれる言い回しや書き方,構成がありますが,そればかりは沢山論文を読むか,わかっている人にばりばり校正してもらわないとわかりません.なお,数学と英語は地道にやる以外の道は存在しません.苦手だと思う人こそ早めに着手しましょう.

インプットが習慣化したら,アウトプットも意識しましょう.説明できないことはわかっているとは言えませんが,実際に説明したり書いたりしなければ本当にわかっているのかがわかりません.特に,わかりやすく簡潔に伝えるということはこの先何度も求められますが,本質を理解していないと簡潔に伝えることは不可能です.はてなブックマーク大喜利をしても良いかもしれません

また,1を伝えるのに必要な知識は1では決してなく,10以上です.10から漏れ出るような1であれば分かりやすい説明も可能になりますが,1分の1ではどうしようもありません.インプット/アウトプットは常に意識しましょう.

1冊ノートを作る

私が専攻する情報工学は生命化学などと違い研究ノートを作る習慣があるとは言えませんが,必ずノートを1冊作り,勉強や研究に関することは全て書くことをお勧めします.その際,必ず日付とページ番号は全ページに入れ,日付が変わったらいくら余白があろうともページを変えましょう.

別に記録を取るのであればEvernoteやSlackといったデジタルな媒体を使ってもいいのですが,物理的な媒体として残したノートは,研究がうまくいかないとき,行き詰まったときにこれだけ頑張ってきたという自信を与えてくれます.同様の理由でページ内検索を必要としない参考書は紙媒体の方が私は好きです.

なお,ノートは自分自身のためにあるものなので,読めることができればそれで十分であり,綺麗に書く必要は一切ありません.むしろ時間の無駄です.

業績を意識する

修士以降に進学している/する予定のある人に伝えたいのですが,何だかんだいって研究はまず数で評価されます.査読無しの口頭発表より国際会議,国際会議より雑誌論文の数が重視される世の中です.JASSOの奨学金返済免除申請などにもかかってきます.

アカデミックポストにおいて,最終的にはこれまでの研究内容と求める人材像,あるいは研究計画が最重要視されるとはいえ,ある程度以上の業績がないと足切りにあいます.博士以降であれば毎年1本の査読付き雑誌論文が最低ラインと言われています.

また,学部生や修士であったとしても,折角よい研究をしても学内でしか発表しないのでは意味がありません是非指導教員と相談して学会発表を経験しましょう.研究費で新幹線に乗りたくはないですか?

ちなみに情報工学系は近年学生に対し学生奨励賞をばらまくのがトレンドになっており,何と1セッションに1人,つまり最低でも5人に1人は受賞します*3.そんな賞でも賞は賞です.業績として今後の対外アピールにどんどん使えるので,積極的に狙っていきましょう.

凄い人と絡んでも自分が凄くなるわけではない

特にTwitterをやっている人に意識して欲しいのですが,著名人と仲良く絡んだとしてもそれはあなたの価値を高めたことにはなりません.世界を牽引するようなビッグな研究者でもTwitterをやっているという人は多く,絡むことは容易ですし実際に絡んでくれることも多いですが,人は人,自分は自分の精神で自らの努力は怠ることのないようにしましょう.私の場合,一時期Facebookが美味しい飯の話と楽しい場所の話,受賞報告と入籍報告,内部の愚痴のみになりほぼ病みかけましたがどうにか持ち直しました.

一芸を伸ばす

SNSをやっているとまるで自分以外の人が十全かのような,例えば業績をガンガン量産する傍らテレビにも出演し法律・文学・医学などの知識に精通し語学堪能で絵も描け大規模サービスの構築・運用経験がありGitやSlackを使いこなしあらかた楽器も弾けライブを精力的にこなす傍らアニメは全部チェックしており一言聴いただけで声優を当て,1文見ただけでフォントについて語れ,ゲーセンではKACに出られるほどのランカーで目当てのSSRは1発で引き当てるような強運の持ち主である金持ちイケメンだと囚われるような気分に陥り,自らのアイデンティティに悩むことがあります.

そこで色んなことに手を出してしまう場合も多いのですが,自己を確立したいのであれば何よりもまず何か1つのことをひたすら伸ばし極めることの方が楽です.それが対外的にも評価されるものであれば尚良しですが,別にそうではなかったとしても,何かあることでは早々負けないという事実は自信に繋がり,自分を支えてくれます.

身近にいるやる気のある人と競い合う

自分1人ではどうも誘惑に負けてしまうという人は,誰かと競い合うという方法もおすすめします.ここでポイントになるのは身近な人ではなく身近なやる気のある人と競い合うこと,飽きたらさっさと辞めることです.人の意識は危機に面するまで早々変わることはなく,やる気ない人のやる気を呼び覚ますのは困難です.従って,最初からやる気のある人とつるみましょう.

とはいっても,ふとしたことであなたのやる気が無くなることがあります.その際は相方に謝罪しつつ,スパッと手を引きましょう.継続のみが目標になった物事は大抵効率も悪く,碌なことになりません

負のスパイラルに陥らないよう,すぐに相談・質問する

※次のお話はフィクションです

毎週ゼミで求められている英語で書かれた専門書の輪読.何となく自信はあったので,ゼミの前日まで遊びほうけました.しかし夜になりそろそろやるかと重い腰を上げ本を開いたところ,1ページ目からして数式の意味がわかりません.∀って何だ?ガンダムか?

死力を尽くして家で徹夜で取り組むものの,結局終わりませんでした.怒られるのは嫌だし,よく考えると若干熱もある気がします.体調不良ならしょうがない.私はやれば出来る子なんだ.指導教員に資料は完成していたが病欠する意をメールします.

指導教員からは「お大事に.今日発表予定だったところは代わりに来週発表してください」というメールが来ました.しめしめ,これでまた一週間休める.体調がそこまで悪くないのが発覚してはいけないため,少なくとも今日明日は大学には行けません.そういえば今日から三日間は懇意にしているソシャゲのイベントでした.100連してイベント特攻を集めてランキング走るか……

前回から少しは反省して,今度はゼミの2日前から準備を始めました.しかし,またしてもスライド作成に躓きます.upper boundsって何だ?ググっても日本語文献は出てこないし,Wikipediaによれば上界というらしいが全く意味がわからん.Complexityってのと何の関係があるんだ?

もはやいくら時間をかけても出来る気がしませんが,先週の時点で資料は完成していたと言ってしまった都合上,先輩や先生に質問することはできません.どうしてこうなってしまったのだろう.携帯の電源を切り,無断欠席することにしました.

 この人がすべきだったことは,一回目のゼミに欠席せず参加し素直に謝ること.またもう少し早めに取り組み,分からないことは即座に質問することでした.

問題は先延ばしにしても解決は一切されませんし,嘘をついてもどんどん追い込まれるだけです.教える側も最初から全て出来るとは一切思っていないので,質問にはまず答えてくれます.先生があまりに忙しい場合でも,参照すべき情報源は提示してもらいましょう.仮にそれすらしてくれない先生なのであれば,あなたは先生をアカハラで訴え,研究室を変えるべきです.

直接口頭で相談する

一度論文添削でもすればわかるのですが,紙やメールベースだけで質問-回答や添削を行うのは口頭でのそれらに比べ非常に困難です.直接相談できる環境にあるのであればそうしましょう.例えば添削の場合はなぜ元の表現がなぜ拙く,新しい表現がなぜ良いのかはセットで伝わらなければ意味がありません.また同じ過ちを繰り返すかもしれないからです.しかし,そのような理由をいちいちタイピングするのは非常に大変です.口頭であれば相手からのフィードバックが即座に得られるため,それに応じて説明を工夫することができます.

〆切りを設定し,落とすことを考えない

研究も進みある程度完成が見えて来たとき,必ずすべきことは投稿する学会や雑誌を決めることです.経験上,〆切りの有無はパフォーマンスに大きな影響を及ぼします.

完璧なものが出来たら投稿しようと考えていると,いつまで経っても,おそらく学位論文以外での研究発表をすることはできません.そもそも全くつけいる隙のない研究など早々あり得ないのですから*4,〆切りを設定してある程度のところで打ち切るべきです.

また,投稿するということを決めたら落とすということは考えないようにしましょう.上記の理由と同様に,いつまで経っても投稿することはできません.

挨拶を怠らず,礼を尽くす

確証バイアスという言葉がありますが,人は論理だけでは動きません.憎い人がやることには何であろうと腹が立つように,逆に印象がいい人には色々と便宜を図りたくなります*5

便座を上げっぱなしにするとキレる女性がいるのであれば使用後に便座は下げるべきですし,まずは生中という人には1杯くらいは付き合うことができればそれが潤滑油になります*6

少なくとも,挨拶は万国共通です.別に頑張って年賀状は出さなくてもいいと思いますが,すれ違ったら声に出して挨拶くらいはしましょう.

1本のストーリーを描く

特に博士論文がそうなのですが,これまでやってきたことを1本のストーリーとして説明する能力が必要になることがあります.別にそれ以前でもそのような能力が求められるというわけではないのですが,ストーリーとして厚みがあるか検証することはそのまま研究・取り組みの完成度に繋がります.

例えば「大学で授業を教えたい」という目標に対しては,「塾講や高校教師でもいいのでは」という突っ込みが生じます.その程度の誰でも思いつくような疑問に答えられないようでは話の薄っぺらさが露呈してしまいます.入試面接などでは致命的でしょう.

 

 

個別の話題に関してはまだ書き足りないこともあるのですが,ひとまずここらへんで筆を置きます.クラウドソーシングの倫理やレポートと中国語の部屋あたりも書きたいなーと思っているのですが,それらについてはまたいずれ.

 


ref.

大学入りたての学生に向けた単位の取り方の記事:

今時の学生には真面目さが求められているよという話:  

 

*1:私は研究室のPCのChromeにはSiteBlockという拡張機能を入れ,動画サイト等には1日20分以上はアクセスできないようにしています

*2:個人的にはfeedly一択

*3:IPSJ全国大会, DEIM,etc……

*4:査読者からコメントがつかないということはまずないです

*5:私はHate-valueと呼んでいます

*6:もちろん様々な理由で困難な場合はちゃんと表明しましょう.そこで文句をつける人はむしろこちらから離れた方が心の平穏が保てます