【参加報告】2017/06/02 JST CREST 3プロジェクト合同シンポジウム「人と人工知能のより良い未来 ~個人・集団・社会のためのAI~」
こんにちは,lumelyです.
最近漫画を読んでいないのでここに書くことがないのですが,積んであった『家電探偵は静かに嗤う』を読んだところ不自然に露出度が高くとても面白かったです.なんだあの刑事.流石のチャンピオンREDといったところでしょうか.
2017年6月2日に筑波大学で開催された,JST CREST 3プロジェクト合同シンポジウム「人と人工知能のより良い未来 ~個人・集団・社会のためのAI~」に参加してきました.事情があって午後からの参加となったため,半分以上は見られなかったのですが,2件ポスター発表をしたのでその報告をします.
3行でまとめ
- クラウドソーシングを用いた文字起こしと図書の同定それぞれで1本ずつポスター発表を行いました(新規情報はほぼ無し)
- パネル「人々とAIの良い関係とは ?!」は見解の相違も無く,何事もなく終わりました
- 中々盛況なシンポジウムでした
目次
ポスター発表
当該シンポジウムはCREST採択課題のうち,研究代表者が筑波大学に所属している3プロジェクトの合同シンポジウムです.
- 自己情報コントロール機構を持つプライバシ保護データ収集・解析基盤の構築と個別化医療・ゲノム疫学への展開
- CyborgCrowd: 柔軟でスケーラブルな人と機械の知力集約
- Social Imaging: 創造的活動促進と社会性形成支援
このうち,私はCyborgCrowdに研究参加者として参加しているため,それに関するポスター発表をしました.具体的には,図書館情報学領域における応用を担当しており,現在は文字起こしと図書の同定の2つを平行して行っているため,その両方をA0サイズのポスターにしました.
前者については以前じんもんこんとiConferenceで発表したものの完全な焼き直し,後者はCA-Eなど至るところで発表したものに1/4だけ現在分析中のデータを付け足したものなので目新しい情報はないです.すみません.製作も3時間強でした.ただし,それぞれ研究プロジェクトとしては進行中なので,今年中に何かしらの報告ができるかと思います.
複数のマイクロタスクの組合せによる戦前期資料のテキスト化
聴衆がどのような方々か全く読めなかったのでこのような題目になりましたが,要はNDLデジコレ資料の翻刻です.iConferenceで一度発表しましたが,改善したものを某国際会議に投稿中だったり,最終的には別の某国際会議に通すことを目標にしています.みんなで翻刻があれだけ成功しているので,もう少しうまいことやれないかな,という感じです.
図書の誤同定を解決する手法としてのマイクロタスク
図書館が作っているメタデータがばらばらなので,人手でどうにかしようというプロジェクトです.おかげ様で第一弾としてのタスクは内部的には終わったので,現在はその結果が本当に正しいかどうか,つまり群衆による書誌同定は信頼できるのか,ということを検証するために諸々進行中です.こちらについても某国際会議で発表したり,某学会誌に通せたらと考えています.
パネル「人々とAIの良い関係とは ?!」
アシロマ会議の「AIに関する23原則」(Asilomar AI Principles)をネタにする形で,人とAIの関係性について議論する,というパネルでした.
パネルディスカッションといえば,普通は各パネラーが全く話がかみ合わない持論を展開することで無限に議論が拡散し,コーディネーターが話をまとめるのに苦労するものなのですが,このパネルはコーディネーターの北原先生も含め,パネラーのCREST研究代表者3人の考えが似たりよったりだったので,基本的に漫才となっていました.森嶋先生がそもそも23項目もある時点で論外と言い切ったため,北原先生がパネル全体を次のようなスライドにまとめていました.
AI 3 Principles of 3 CREST Projects pic.twitter.com/WawSHuwxxl
— Kosetsu IKEDA (@lumely) June 2, 2017
私の理解した範囲で解説をすると,パネラーの3人はAIをコンピュータ同様の道具としか見ておらず,えてしてマトリックスやターミネーターの世界観が念頭にあるかのような強いAIの実現によるシンギュラリティには懐疑的なようでした.つまり,AIそのものが何か悪さをするのではなく,悪意を持った人がAIを使って悪いことをする,という考えです.従って,製造物責任法と同様にAIシステムの開発者は責任を負うべき,というのが1項目です.
2項目目はAIを単なる技術とみなす立場から,それを有効活用しようということだったと思います.3項目目は忘れました.ホーキング先生などに対する配慮だったかもしれません.
それで,このAIに関する23原則は原文を検索してもらえればよくわかるのですが,合計で7回もbenefitあるいはbeneficialという単語が出てきます.特に第1項として,
1) Research Goal: The goal of AI research should be to create not undirected intelligence, but beneficial intelligence.
のように「有益な知能の開発」をAI研究の目標として定めています.パネラーは3人とも,誰がその有益さを判断するのだとこの項目には否定的だった,というのが最後の項目です.応用研究至上主義みたいな考えがこの原則にも見え隠れしていて,なんだか嫌な感じですね.
ところで,?!は!?より煽り感があってよいと思います.
むすび
研究成果が出る狭間の時期のシンポジウムだったため,完全に焼き直しの発表をしてしまいました..次は新しい成果を出したうえで,某カンファレンスや某サミット,某国際会議で何かしら報告をすることになるかと思います.よろしくお願いいたします.