図書の網

@lumelyのブログです.概ね研究や教育の話を書きます.

大学の単位の取り方 2016年度版

こんにちは,lumelyです.
天野めぐみはスキだらけ!』の剣道描写がかなりしっかりしていていいなと思いました.たとえば8話扉絵は髪周りの描写は気になりますが,面金の本数や目が来る所の間隔,面紐のつけ方などは大変手が込んでいて素晴らしいです.

初回授業も終わった頃ということで,今回は単位の取り方を書きます*1 .学生として大学には9年間もいて,さらに教える側にも何度も回ったことがあるため,そこら辺の先輩に聞くよりは大局的な話になったかと思います.なお,今回は大学生を対象にした記事です.大学院生の場合は180度方向が変わるので,参考にしないでください.

まとめ

  • 単位を取って卒業するだけならば遅刻・欠席・居眠りをせず毎日大学に通うだけで簡単にできる.問題はそこで何を学ぶか
  • 「あとでやる」はまず上手くできないので,質問,ノート・メモ取りなどで授業を最大限に活用する
  • 授業はそれ単独ですぐに役に立つというものでは決してない.発展的な内容の自学自習が必要

目次

  • 大前提1:GPAを上げる≒全ての授業で良い評価を得ることのみを目標にしない
  • 大前提2:授業はきっかけを与えるものでしかない
  • まずは履修登録:変更可能期間や標準履修年次を確認.履修要件を満たしていない場合は事前確認を
  • 授業に臨む:前から4番目あたりに座る
  • 授業前:音が鳴るものは電源を切るかミュートする
  • 授業中:メモはいつでもとれるように
  • 授業中:ノートを取ることは手段であり目的ではない
  • 授業中:写真撮影は慎重に
  • 授業中:眠くなったとき
  • 授業中・直後:本当にわからなかったらすぐ質問する
  • 授業前後:どうしても休まざるを得ない場合
  • 最後の授業:授業評価アンケート
  • 期末考査:筆記試験よりもレポートが楽
  • 期末考査:「持ち込み可」の試験は難しい
  • 期末考査:フォーマットを守らないのは論外
  • 期末考査:〆切りを守らないのも論外
  • 期末考査:先生は単位を出したくてしょうがない
  • 期末考査:時間を掛ければよいレポートができるわけではない
  • 授業全体:知り合いを作って一緒に学ぶ
  • おわりに:授業の内容が面白いなと思ったら

 

大前提1:GPAを上げる≒全ての授業で良い評価を得ることのみを目標にしない

大学の授業では,秀(A+),優(A),良(B),可(C),不可(D)の5段階評価がなされます.このうち不可(D)は不合格,つまり単位として認められませんが,可(C)以上は単位として認定されます.一般的な卒業の要件の1つは約125単位を4年間で取得することです*2 .ここで,125単位を取得したが2人居たとしても,片方は全てA+で,もう片方は全てCだったとすれば2人の間には明らかに何らかの差があるため,GPAという仕組みで点数付けをします.このGPAは大学院への推薦や専攻振り分け,研究室配属,奨学金交付時の選考等に用いられますが,全ての学生にとって重要というわけではありません.高校までであれば成績は内申点として非常に重要なものだったかと思いますが,現状の大学院の一般入試は少なくとも国内であれば4年次に真面目に研究をしていれば落ちたという話はあまり聞きませんし*3 ,研究室も先生の守備範囲とやりたいことが完全に合致しており,かつやる気に満ちあふれていれば大体は希望通りの配属がなされるでしょう.

もちろん専攻はGPAの高い順者の希望から配属させていくことが多く,悪すぎると大変なことになります.従って人並み以上のGPAは取るべきであり,GPAが高いにこしたことはありません.しかし,重要なのはどのような目的で何を学んだかであり,GPAではありません.もちろん就職の際に「プログラミングが得意です!!」とアピールする人がプログラミングに関する科目で軒並みCを取っていれば説得力も無くなりますが,成績は何かを目指しているということを裏付けるものの1つにしか過ぎません.例えばプログラマ志望であれば実際に作って運用したシステムの話やアクセス数,ユーザ数などをアピールした方が遥かに説得力が増すでしょう.

なお,GPAを上げるに際し,基本的なポイントは次の3つです.参考にしてください.

  1. 全ての授業に遅刻・欠席しない
  2. 内職*4しない,寝ない
  3. 話をしっかり聞き,特に口頭で述べた要点をメモする

 

大前提2:授業はきっかけを与えるものでしかない

勉強がしたくて大学に入ってくる人は多いですが,大学の授業は基本的にきっかけを与えるものです.そのまますぐに使える技術や知識の取得を目指すのであれば専門学校のようなそれに応じた場所に通うべきであり,大学の授業はこのような分野や問題があるという視点を与えるものです.興味が出た対象に対しては,自分自身で掘り下げの勉強を行う必要があります

そのような観点からすれば,先輩の話などをもとに「面白くない」「きつい」という理由で履修しないとすることはきっかけを自ら手放すことと同義であり,非常にもったいないと言えます.取得が楽という単位ばかり取るというのも同様です.また,20歳前後が考えた「面白そうなこと」というのは非常に微視的なものでしかない可能性も高いです.何のために大学に進学したのかは早めに考えておくと良いでしょう.

一般に,学年が進むにつれ忙しくなります.もちろん勉強だけが学生の時期にしかできないということでは決してありませんが,就職した後,働きながら勉強するのは大変に難しいことです.

 

まずは履修登録:変更可能期間や標準履修年次を確認.履修要件を満たしていない場合は事前確認を

大学の全ての授業は,履修登録をしないと単位を取得することができません.履修登録をせず聴講することは席さえ余っていればおそらく可能ですが*5 ,どのような高評価を出そうとも単位を取得することはできません.教員の立場からしても,資料を何部用意すればいいのかといったこと等の授業準備に影響が出るため,可能な限り受講前に*6 履修登録をしましょう.履修登録期間であれば自由に登録,取り消しができるはずなので,とりあえず登録して受講し,絶対に学びたいことと違うと確信した場合は登録を消す,というのが望ましい流れです.なお,履修登録期間を過ぎてしまったにも関わらず受講をしたい場合は,偉い先生の押印が複数必要となります.印鑑を押して貰う側,押す側共に非常に面倒なので,履修登録は忘れずに行いましょう.

また,授業は学位授与の方針*7 や学部としてどのような授業を展開するかの方針*8 に従って設計・実施されます.授業は積み上げるように展開されるため,前提となる知識や,特定の授業の単位を求める場合があります.それらはシラバスに必ず書いてあるので,履修登録前に必ず確認しましょう.小学生がいきなりε-δ論法を学ぶのが困難なように,背伸びをしすぎて良いことはあまりありません.

標準履修年次などの要件を満たしていない場合は,まず授業担当教員にメール等で確認を取るべきです.特に,総合大学においては他学部の授業も履修することが可能なことがありますが,学部が変わればカリキュラムも代わり,前提としている知識も大きく変わるため,必ず事前に履修が可能かどうかの確認を取るべきです.大抵の先生はやる気があると認めてくれれば歓迎してくれるとは思いますが,もし断られた場合は諦めましょう.

 

授業に臨む:前から4番目あたりに座る

履修登録が無事済んだら,日時や教室を確認して授業に向かいましょう.ただし,そこそこな頻度で休講になったり,教室が変わったりするので掲示には注意が必要です.

どこに座るべきかについてですが,教壇に立つ先生のうち,5人中4人はマイクの使い方を知らない(すぐボンボン叩くし,魔法の杖かのように扱い指向性を無視する)ので,後ろの方に座ってしまうと話が聞こえません.また,地声の大きさに自信がある先生は執拗にマイクを使いたがりません.音源の関係で前の方はよく聞こえますが,後ろの方はやはり聞こえません.

さらに,授業スタイルはPowerPointKeynoteを使ったスライド投影や,板書を行うものが多いのですが,大抵図1枚やキーワードを並べただけの非常に抽象的なスライドか,8ptくらいの非常に細かい文字を詰め込んだスライドのどちらかという極端な場合が多いです.後者の場合,後ろの方に座ってしまうと物理的に字が読めないので前の方に座った方が無難です

どの大学でもまず前の方は席が空いているため,授業開始ぎりぎりでも前の方は座ることができます.ただし,最前列がいいというわけではありません.常に首を上に上げることになりがちなので,首が痛くなります.また,なるべくスライドと話をする人の両方が無理なく見えた方がその話の重要度が分かるため,前から4番目くらいがいいでしょう.

 

授業前:音が鳴るものは電源を切るかミュートする

絶望先生に出てきた怒りゲージが爆発寸前の旅館の人を彷彿とさせますが,私語や居眠りを日頃許容している先生はいつ爆発してもおかしくありません.携帯電話やスマートフォンの着信音が鳴ろうものなら突然怒髪天を衝き,退室を命じるということも十二分にありえます.その間,どうでもいいことで授業が止まるため,授業が始まる前に音が鳴るものは電源を切るか,ミュートすべきでしょう.

 

授業中:メモはいつでも取れるように

授業中,本当に重要なことは大抵「口頭で」言うため,必ずいつでもメモを取れるようにしましょう.その場で覚えようと思っても家に帰ってご飯を食べて寝れば大体忘れますし,数ヶ月後の試験の頃には完全に忘れています.咄嗟にメモが取れれば紙でもパソコンでもどちらでも構いませんが,即時性と自由度という意味では紙のノートを強くお勧めします.図表を即座にメモするのは私のスキルでは無理でした.

 

授業中:ノートを取ることは手段であり目的ではない

前述の通りノートやメモを取ることは非常に重要ですが,ノートは自身の理解を促進,あるいは補助させるためにあるので,必ずしもきれいに作成する必要はありません.先生が話したことを一字一句ノートに落とし込む必要もありません.私はノートを取っている間に話を聞くことはできなかったため,授業中は要点だけをすばやくノートにとり,後は話を聞くという方式に落ち着きました.後述の試験対策のため,できればその日のうちにそのように取ったノートを見返して,補完すると良いと思います.

 

授業中:写真撮影は慎重に

ここ数年,板書等をスマートフォンなどで撮影する受講生が増えてきました.メモやノートへの筆記が間に合わないとき,瞬間的に記録できる写真撮影は有効だと思いますが,個人的には極力避けた方が無難です.まず,文脈から切り離された板書やスライドの写真はそれ単体では何の意味もありません.必ずどのような流れでその板書がなされたのか,スライド中の図表はどのような意味を持つのかを合わせてメモする必要があります.

しかし,写真という一見完璧な記録を取ってしまうと,それに安心してしまい肝心の理解しようという意思が弱まる恐れや,話を聞かなくても資料があればそれで十分だと勘違いしてしまう恐れがあります.

また,自分を撮影されることを嫌がるという人もいます.私的複製として,個人の勉強に使うためであれば写真を撮ることは許されるはずですが,それをTwitterにアップロードしないとは撮影された時点では保障されないため,最初から禁止する先生はいます.

 

授業中:眠くなったとき

授業中,どうしても眠くなるということがあります.特に昼ご飯を食べた次の授業や,動画を上映するために教室の明かりを落としたときなどは危ういです.授業中の居眠りに対し,先生は大きく分けて

  1. 他人に迷惑を掛けないようであればいいよ派
  2. 目障りだから教室から消えて欲しいよ派

の2派に分けることができます.どちらにせよ,教室の机は固く睡眠の質としても良いものではないので,授業中寝るくらいであれば授業を早退し,家のようなもっと良い場所で寝た方が良いでしょう.なお自覚は困難ですが,いびきをかいてしまう人は先生,受講生の両方から大変に嫌われるので絶対に教室で寝るのはやめましょう.

個人的に効果があった目が覚める方法としては

  1. 叩き起こされて怒られる
  2. 水で顔を洗う
  3. 目薬を差す
  4. フェイスシートで顔を拭う
  5. メントス+水を服用する

の5つがあります.うとうと夢心地で話を聞くくらいであれば中座してトイレに行き,顔を洗うと良いでしょう

 

授業中・直後:本当にわからなかったらすぐ質問する

たとえ標準履修年次が合っていたとしても,先生の口からは専門用語が次々に飛び出すことが非常に多くあります.このとき,まずはすぐにその単語なり概念をメモすることは必要です.時間に余裕があるのであればすぐに調べると良いと思いますが*9 ,英語文献しかないなどの理由ですぐにはよく理解できないというときがあります.このとき,許されているのであれば授業中,それが難しいようであれば授業直後にすぐに質問しましょう.

担当教員はあなた専属ではないため他の人を顧みなかったり,少し考えれば・調べればわかる質問で質問攻めにするのは大変よろしくありませんが,本当によく考えた末でわからないのであれば先生は快く教えてくれることでしょう.「あとで調べる」としたことは大抵調べませんし,そこら辺の同期や先輩より担当教員の方が的確な回答が出来るに決まっています.これを利用しない手はありません.

なお,基本的に担当教員はオフィスアワーという時間帯を設定しており,その時間帯であれば建前上はある部屋にいて,質問を自由に受け付けてくれることになっています.このオフィスアワーはシラバスに書いてあります.ただし,建前上と書いたように大抵は多忙につき居なかったりするので,極力事前にメール等で予約しましょう.

なお,学年が進むにつれ,「良い質問」をする能力が重要になってきます.就職活動において,「最後に何か質問はございませんか?」と聞かれた時がそれまでの集大成になるでしょう.良い質問は常日頃から意識して研鑽しないとできないものなので,良い質問をしたければ頑張りましょう.

 

授業前後:どうしても休まざるを得ない場合

体調不良や冠婚葬祭,徹夜明け等々の理由で,どうしても休まざるを得ないときがあります.授業は原則として全日数の2/3以上出席することが単位取得の必要条件となっていますが,逆に言えば1/3未満であれば休むことが可能です.まず,原則として大学に公欠(休みだが出席扱い)というものは存在しません.インフルエンザのような出席停止となる病気に罹患した場合は特別に何らかの措置が図られることもありますが,その際でも罹患を証明する書類が必要になります.「欠席届」というのがありますが,これは無断欠席ではないということを示すだけの書類なので,提出したからといって欠席がなかったことになるわけではありません.詳細はあやふやなのですが,1度でも無断欠席した場合は担当教員の裁量でいきなり不可にすることもできるのですが,欠席届はそれを防ぐための意味しかありません.

いつ何が起こるかわからないため,「あと何回休める」とは絶対に考えないようにしましょう.出席日数がぎりぎりの時に風邪でもひこうものなら詰みです.

なお,スポーツの大会やイベント出席を理由にした公欠願いは,どこまでを公欠にするかという境界線が曖昧なため最近は一律許可されないように思えます.大会などの課外活動で休まざるを得ない人は,そのときに休めるよう特に普段の授業は無遅刻無欠席で望むべきでしょう.

 

最後の授業:授業評価アンケート

大学には授業評価アンケートというものがあり,最終授業の頃にマークシート式で授業に対する評価を匿名でつけることができますが,そもそも授業間の相対的な評価は実質的に困難なため,どのような評価を受講生が書こうとも意味はまずありません.

特に,大学の先生は内部的には解雇されないことが制度によりほぼ保障された先生とそうではない先生の2つに分けることができますが,前者については授業評価アンケート如きではその地位を脅かすことはできません.

過去に,本当に酷いと思った授業を受講生間で結託して最低評価をつけたことがありますが,外部から観測する限りにおいて特に意味はありませんでした.ただし,教員会議等においては回覧されるため,気休め程度に考え適当につけると良いでしょう.

 

期末考査:筆記試験よりもレポートが楽

授業の評価は期末考査を通じて行う授業が多いですが,この試験は基本的にレポート提出か筆記試験のどちらかになります.稀に先生がどちらがいいかを聞いてくることがありますが*10そのときは必ずレポートを選びましょう.筆記試験が数時間以内に頭の中にある知識をいかに紙面に再現する試験だとすれば,レポートは制限時間数週間,何でも持ち込み,相談ありの筆記試験に等しいです.

何かを参照した際は必ずそれを引用等で明示しなければなりませんが*11 ,それさえすればいくらでも参照し放題ということです.

期末考査:「持ち込み可」の試験は難しい

筆記試験において「持ち込み可」というものがあります.ただし,何でも持ち込んでよいというわけではなく,自筆のA4用紙1枚,ノート,辞書等の指定があります.ここで注意すべきなのは,「持ち込み可」という試験の設題は,キーワード程度を持ち込んでもどうにもならないようなものであるということです.例えば

  • 図書館情報学とは何かを,授業の内容を踏まえ分かりやすく述べよ」
  • 「Memexが与えた影響を,今日の状況も踏まえ解説せよ」
  • 「研究不正がなぜ起きるのか,またどうすれば防ぐことができるのかを論じよ」

などの,非常に抽象的な「述べよ」問題が基本となります.高評価が取れる最も簡単な方法は,先生が授業中に口にした趣向を原稿に反映させることです.今時,論理さえしっかりしていれば先生と真っ向から反対する主張をぶち上げても減点されるということはまずありませんが,日頃の授業で話をしっかり聞いておかないといずれにせよ出来ることではありません.当然,他人のノートを直前にコピーするくらいでは歯が立たないため,日頃から寝ずに話を聞くことが重要となります.

 

期末考査:フォーマットを守らないのは論外

受講生1人1人にとっては高々数回のレポートや筆記試験ですが,採点する先生にとっては受講生の数だけ,すなわち何十,何百ものレポートを採点しなければなりません.仮に100のレポートがあったとして,1人あたりの採点に10分余計にかかるとすれば全体として16時間強もの時間がさらに必要となります.従って,採点が面倒になるフォーマットの逸脱,例えば両面,片面指定の無視,インデントなし,手書き,テーマの無視などは大幅な減点となり,最悪見て貰えません.

こんな細かいことと嘆いたり,柔軟に対応しろと嘯く前に「一般的な論文の書き方」を身に付けましょう.今後何度も必要になる能力です.

非常に古い本なので表現が硬いところがありますが,レポートを書く上では次の本が定番とされています.まずは一読すると良いでしょう.図書館にも必ずあります.

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

 

 

期末考査:〆切りを守らないのも論外

実は大学の先生こそ〆切りをあまり守らないので有名なのですが*12レポート等の〆切りは厳守しなくてはなりません.数分の遅れくらい多めにみてくれという人を何人も見かけましたが,公正な評価のために,〆切りは1秒たりとも破ってはいけないものです.例えば,仮に1分〆切りを超過した人を許したとすれば,2分超過した人のレポートも受理しなければいけません.これを数学的帰納法を用いて考えれば,いくら〆切りを超過したとしてもレポートを受理しなくてはなりません.それでは採点ができないため,やはり厳格な〆切りを設定する必要がありますが,それは第2の〆切りを作ることに他なりません.だとすれば,最初から〆切りを守った人のレポートだけを受理していれば,ある超過した人のレポートは受け取り,別の超過した人のレポートは受け取らなかった,という不公正さは無くなります.ただし,全ての先生がこのように厳格に考えているというわけではないので,たとえ若干超過したとしてもレポートを受理してくれないか打診してみる価値はあります.正直者が馬鹿を見ないためにも,先生の様子を見てアピールしていきましょう.

 

期末考査:先生は単位を出したくてしょうがない

実際に「不可」の判定が出ると先生を恨みたくなりますが,多くの先生は基本的には単位を出したくてしょうがありません.なぜなら,単位を落とした受講生は来年も同じ授業を受講しなくてはならず,その分先生の負担は増えるからです.経験上,1度留年したくらいでその人のレポートが劇的に良くなるということはほぼなく,来年も不可か可ぎりぎりのレポートを読まなくてはなりません.また,あまりに多くの再履修者が出ると教室を変更するなどの手続きも増えます.

従って,多くの先生は何か少しでも評価できるところはないか,レポートを目を皿にして読みます.ただし,単位は「到達目標」*13という授業に対して設定された目標をどの程度達成できたかに応じて与えられるものなので,本当にどうしようもないレポートや,そもそも出席日数が足りない受講生に対しては単位を出すことができません.このあたりの背景も踏まえつつ,試験に臨んでください.

 

期末考査:時間を掛ければよいレポートができるわけではない

私はレポートを課すとき,レポート作成にかかった時間を自己申告で書かせています.その結果を見てわかったのですが,時間を掛ければ掛けるほど良いレポートになるとは限りません.受講生の中には,稀に「これだけ頑張ったのだから評価してほしい」と嘆願する人が居ますが,評価は基本的にレポート作成の過程ではなく,結果を基に行われます.前述の通り採点には時間をかけていられないので,同じような論旨,論理であれば,レポートは短ければ短い程良いです.もちろん時間をかけて推敲するのは良いことですが,蛇足がないように注意しましょう.

 

授業全体:知り合いを作って一緒に学ぶ

これまで述べたことをあからさまに守っていれば,あなたは同級生からクソ真面目,ガリ勉,意識だけ高い系の烙印を押されることでしょう.これらの認識をされて悪いことはあっても良いことはありません.勉強の効率を高めるためにこれらのことを意識するのは大変重要ですが,直接他者を諭したり強要したりすることはないようにしましょう.あいつ授業中に寝てる!と憤ったり,楽してレポートを書いていると義憤に駆られたり,単位を落としたという自虐風自慢を愚かだと思っても,邪魔をされない限りは決して口にしたりそれを正そうとはしたりしないようにしましょう.他人の人生に口を出す積極的理由はありませんし,仮に将来その人が後悔したとしてもあなたに何の関係もありません.もし何か不正行為をしているのであれば証拠と共にそれを密告しても構いませんが,不正を看破するのは担当教員の仕事なので,必ずしもそれを報告する必要はありません.

それよりも,一緒に勉強できる友人を作るようにしましょう.例えば,誰かに説明するというのは自らの理解を促進させます.わからないことは説明できないので,説明をしようとするうちにどこまでがわかり,どこまでがわからないのかが明確になります.何らかの事情で欠席してしまったときも,頼れるような友人が居れば最高です.

 

おわりに:授業の内容が面白いなと思ったら

授業で先生が教えてくれることは,その分野の入り口にしかすぎません.興味を持ったらその先を自分自身で勉強する必要があります.それによって専門知識を身に付けることができれば色々と良いこともあるでしょう.例えば私は簡単なHTMLでWebページを作るという1コマの授業からWebサイト構築に興味をもち,周辺技術を色々と身に付け,学部生の間は小規模なWebサイト製作であれば請け負えるようになりました.Webサイト製作は1回につき数万~数十万を貰えるので,その分時給900円くらいのバイトはやらなくてよくなり,色々と捗りました.

もしその分野に興味が沸いたのであれば,是非担当教員に相談しましょう.喜んで自習するための書籍や論文,資料を紹介してくれるはずです.今は(英語ができれば)Web上に有用な教材は数多くあります.学部生の頃はその凄さがわかりにくいのですが,大学に籍を置くということは,大学が契約する雑誌論文やデータベースが使い放題ということです.その点で,例え学生であっても環境は最先端の研究者と同じであると言えます.仮に個人で契約しようものなら数十万単位のお金が必要となります.高い学費を払っているのですから,これを活用しない手はありません.

大学4年間は長いようでいて気が付けばあっという間に終わります.将来「もっと学生のうちに勉強しておけばよかった」と嘆かないよう,是非勉学も頑張りましょう.

 


ref.

研究したい人向けの記事: 

 

 今時の学生には真面目さが暗黙的に求められているよという話:

*1:昔々,某所に単位の取り方という記事を寄稿したのを思い出したのが思い立ったきっかけ

*2:各授業は専門科目や専門基礎科目といった分類がなされており,それぞれ何単位必要と決まっているので,何でもいいから約125単位を取れればいいというわけではありません.4年次になって詰むことも多いので,履修計画は早いうちに立てましょう

*3:むしろ筆記試験やTOEIC等で致命的なミスをして落ちたという話ばかりです

*4:話を聞かず全く別のことをやる行為を指す俗語

*5:いわゆる潜り込みと言います.集中授業等では関係者がにやにやしながらよく潜り込んでいます

*6:直前だと準備という観点ではほぼ変わらないので,1日以上前に行うことが望ましい

*7:ディプロマポリシーといい,かなり抽象的な内容ですが公開されているはずなので読んでみましょう

*8:カリキュラム・ポリシーといい,少なくとも似たようなものは公開されているはずです

*9:調べている間に話が先に進んでしまうと困るため,タイミングは図る必要があります

*10:採点の手間は変わらないため.受講人数があまりに多い授業は穴埋め式の筆記試験等を課すかもしれませんが

*11:これを怠った場合,最悪除籍や退学処分となります.少なくとも留年は免れないでしょう

*12:正確に言えば,必ず守る人と全く守らない人で両極端

*13:シラバスに書いてあります